コラム

Vol.40「災害で被害を受けたときの税制上の支援」

地震、風水害などの災害によって、会社や個人の資産が被害を受けた場合には、税制上の支援措置があります。
さらに今回の東日本大震災の被災企業等には、新たな特例措置が設けられました。
※特例措置は、4月27日施行の「震災特例法(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律)」に基づくものです。

◆被災した法人への税制上の支援
(1)被災した会社の商品、建物等の損害額は経費になります
被災した商品、店舗、事務所、工場等の資産(たな卸資産、固定資産)の損害額は損金(経費)になります。
被害を受けた店舗・事務所など建物の取り壊しや撤去等のための費用も経費になります。

(2)被災した資産の復旧費用の経理処理は次のようになります
建物、機械、車両、備品等の固定資産の現状を回復するためにかかった費用は修繕費になります。
これは、災害によって被災した資産においても同様です。
さらに災害の場合には、次のような支出も修繕費として認められます。
  • ①被災した固定資産に対して、余震などによる二次災害を防ぐための補強工事や土砂崩れ防止工事などを行ったときの費用
  • ②被災した資産の現状回復費用や上記①のようなケース以外で、例えば、修理代金の明細書に「修繕工事一式」としか記 載されていないようなときなど、修繕費か資本的支出(経費にならず固定資産になる)を区別することが難しい場合に、かかった費用の30%

(3)災害によって生じた欠損金は、7年間繰越すことができます
会社の欠損金の中に、災害で被害を受けた会社資産の損害分が含まれている場合には、7年間にわたって、欠損金を繰越控除することができます。

□東日本大震災の被災企業への特例
(1)震災によってたな卸資産等に損失を被ったことで、欠損金が生じた場合には、2年前まで遡って法人税の還付を受けることができます(一定の限度があります)。還付の対象となる期間等は、次のとおりです。
  • ①平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に終了する事業年度
  • ②平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間の仮決算による中間申告
    法人税の確定申告書(または中間申告書)の提出と同時に還付が受けられます。

(2)平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において、たな卸資産等に震災による損失金額がある場合には、その中間期間の仮決算による中間申告において、その中間期間に課される利子、配当等の源泉所得税額で、中間期間の法人税額から控除しきれなかった金額(一定の限度があります)の還付を受けることができます。

◆被災した個人事業者への税制上の支援
(4)被災した商品、店舗等の損害額や現状回復の費用は必要経費になります
前述(1)の法人の場合と同様に、被害を受けた商品、店舗、事務所等の事業用資産の損害額を必要経費にすることができます。
復旧費用についても、前述(2)の法人の場合と同様です。

□東日本大震災の被災者への特例
商品、店舗等などのたな卸資産や事業用資産等が被災した個人事業者には、次の措置が設けられました。

  • ①損失額を、平成23年分ではなく同22年分(昨年分)の必要経費にすることができます。
  • ②平成22年分の必要経費にしたことで、所得が純損失になってしまった場合には、同21年分に遡って、所得税の還付を受けることができます(青色申告者の場合)。
    すでに平成22年分の所得税の確定申告を済ませている場合には「平成22年分所得税の更生の請求」が必要です。
    確定申告を済ませていない場合は、平成22年分の確定申告で行います。所得税の還付を受ける場合には、所得税の還付請求が必要になります。

(5)災害によって生じた純損失は、翌年以降に繰越すことができます
純損失の中に、たな卸資産や事業用資産の損失分がある場合で、その金額が大きくて1年では控除しきれないときには、3年間繰越して、控除することができます。

□東日本大震災の被災者への特例
控除しきれない損失の繰越期間が5年に延長されます(ただし、災害によってたな卸資産や固定資産の10分の1以上が被害を受けた場合)。

◆被災した個人事業者への税制上の支援
(6)個人の住宅や家財等の損害には、雑損控除などが受けられます
サラリーマンなど個人の場合、被災した住宅や家財等の損害額について、①所得税の雑損控除、または②災害減免法による税金の軽減免除、または②災害減免法による税金の軽減免除、いずれかの方法によって、所得税の全部または一部を軽減することができます。

①所得税法の雑損控除による方法
雑損控除とは、災害による住宅・家財等の被害額の一定額を所得から控除するというものです。その年の総所得金額から損害額を控除しきれないときには、その損失を3年間繰越すことができます。雑損控除の金額は、次の2つのいずれか多い方の金額です。
●(差引損失額) ― (総所得金額等)×10%
●(差引損失額のうち災害関連支出の金額) ― 5万円


②災害減免法の所得税の軽減免除による方法
災害によって住宅や家財の2分の1以上が被害を受けたときに、その年の合計所得金額が1,000万円以下であれば、所得金額によって、所得税が軽減または免除されます。

所得金額 軽減割合
500万円以下 所得税の全額
500万円超750万円以下 所得税の2分の1
750万円超1,000万円以下 所得税の4分の1

※一般に、所得金額が500万円以下であれば、所得税が全額免除となる災害減免法の方が有利ともいえます。しかし、雑損控除は、控除しきれない損害を3年(東日本大震災は5年)繰越して控除できるため、所得や損害額の大きさによっては雑損控除の方が有利な場合もありますので、会計事務所にご相談ください。

□東日本大震災の被災者への特例
雑損控除または災害減免法について、平成22年分(昨年分)の所得から適用することができます(確定申告を行っていないサラリーマン等の方も同様です)。この場合、すでに確定申告を済ませている場合には、「平成22年分所得税の更生の請求」が必要です。また雑損控除を選択した場合で、損害額が1年で控除しきれない場合の繰越期間が5年に延長されます。
戻る