コラム

『利益のでる経営④「値引き」は売上げだけでなく利益を直撃する』

昨今の厳しい経営環境下では、値引交渉を受けることは避けられません。
しかし、過度な値引きは経営に大きな影響を及ぼします。

◆値引きは企業活動の源泉(=売上げ)を減らす!

売上げは、企業において絶対的に必要なものであり、すべての源泉です。売上げがなければ、仕入先等への支払いや社員への給与支給などもできず、当然会社が継続し成長していくための原動力である利益を得ることはできません。売上げは以下の計算式で表されます。

売上高=販売単価×販売数量

つまり、売上げを増やすには、「販売単価を上げる」か「販売数量を増やす」しかありません。ところが、値引きにより販売単価を下げた場合、販売数量が変わらなければ、当然、売上高が減少し、売上高が減少すれば、利益に影響を及ぼします。

◆その値引きは利益にどれくらい影響を及ぼしますか?
「ほんの数%の値引きでの販売だから、そんなに影響はない」などと考えていませんか?
値引きがどのくらい利益に影響を及ぼすか、簡単なケースで見てみましょう。

【ケーススタディー】
仕入価格1,400円のA商品を販売単価2,000円で500個販売しました。
限界利益などは以下のとおりです。

・2,000円×500個=100万円←販売金額
・1,400円×500個=70万円←仕入原価(変動費)
・100万円-70万円=30万円←限界利益額
・30万円÷100万円×100=30%←限界利益率

〔このケースで5%の値引き販売をしたら?〕
販売数量は変わらないとしたときの販売金額などは以下のとおりです。
・2,000円×95%×500個=95万円←販売金額
・95万円-70万円=25万円←限界利益額
・25万円÷95万円×100≒26.3%←限界利益率
5%の値引きによって限界利益額が25万円に減少し、限界利益率では約4%低下してしまいます。
値引き前後の限界利益額を比率で比較すると、値引き後の限界利益額は値引きをしない場合の83%になります。つまり5%の値引販売によって、限界利益額を17%も減少させてしまうことになるのです。
※25万円(値引き後の限界利益)÷30万円(値引き前の限界利益)×100≒83.3%

<値引販売の点検シート>
①値引きは売上げと利益に大きな影響を及ぼすことを全員が理解していますか
②過去の慣例でなんとなく値引きを継続している取引先はありませんか
③値引きをしないと本当に購入してもらえないかどうかを検討していますか
④商品(製品)・サービスの品質やアフターフォローを高めることによって値引きしないで、お客様に満足してもらうことを検討しましたか
⑤誰が・いくらまで値引きできるかのルールを決めていますか
※値引きによりどれくらい利益が減少するのかなどを分析した上で、以下のようなルールを設けましょう。
役職者ランク別に値引きの許容限度を設定する。
・「発売後何週目には○%の値引き」といった基準を定めておく。
・あらかじめ設定した適性利益額をクリアした場合、その度合いによって事前に設定した範囲で値引きを行う。など
⑥割引券発行やポイント制などによる効果をチェックして、制度の見直しをしていますか
戻る