コラム

「年末調整でのよくある間違い」

秋から年末にかけて、社員旅行や忘年会などのシーズンです。社員の慰労を目的とした社員旅行や忘年会は、通常は福利厚生費になりますが、その内容や程度によっては、交際費や役員、社員への給与とみなされることがあります。年末の厚生行事、お歳暮などについて、間違いやすい経理処理についてまとめてみました。

■社員旅行の費用 >> 通常の社員旅行ならば福利厚生費
況の影響で、社員旅行などを実施しない企業も増えていますが、社員の士気向上や社員への慰労を目的に実施する企業も少なくありません。
会社が社員の慰労のために行う社員旅行の費用は、次の2つの要件を満たせば福利厚生費となります(損金になります)。

●旅行期間が4泊5日以内(海外のときは現地での滞在日数。機中泊を除く)
●旅行に参加する従業員等の割合が全従業員の50%以上


ただし、「専ら従業員のために行われる旅行のために通常要する費用」でなければ認められませんので、豪華なホテルに宿泊したり、特別に豪華な飲食をした旅行であれば、交際費、あるいは社員への給与になります。
なお、社員旅行を行ったときには、次のような資料を保存しておきましょう。

●旅行会社等の請求書、領収書
●旅行会社のパンフレットや日程表
●現地での集合写真など


また次のようなケースは注意が必要です。

■都合で参加できなかった社員に、旅行費用相当額の金銭や旅行券を支給したり、土産物を渡した。
金銭や旅行券の支給は、社員への給与になり、源泉徴収も必要になります。土産品については、通常のお土産程度のものであれば福利厚生費で差し支えないと思われます。

■旅行先で、一部の社員だけで会社負担でゴルフコンペを行った。
社員への給与になり、源泉徴収が必要です。

■役員のみを対象に旅行を行った。
従業員全員を対象にしたものではないため、役員給与となり、役員個人への源泉徴収も必要になります。

■成績優秀社員を表彰旅行に招待した。
対象が特定の社員であり、労務の対価といえますので、給与または賞与となります(源泉徴収も必要です)。

■永年勤続者を表彰旅行に招待した。
永年勤続者表彰の記念として旅行、観劇に招待したり、記念品を贈るときは、次の条件に該当すれば給与にはなりません。
●その費用が、その者の勤続期間等に照らして、社会通念上相当であること
●その表彰が概ね10年以上勤務した人を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける人については、おおむね5年以上の間隔をおいて行われていること

■忘年会の費用 >> 社内と社外の忘年会の処理に注意!
年末になると会社や部署内で忘年会を行うことが多くあります。社員の慰安のために行う忘年会の費用は、大半の社員が参加しており、通常要する程度の費用であれば、福利厚生費として認められると思われます。

■慰労を名目に、役員や幹部社員だけで忘年会を行った。
交際費(あるいは給与)になります。

■社内の忘年会後、一部の社員で会社持ちで二次会を行った。
交際費(あるいは給与)になります。

■一部の部署だけで忘年会を行ったが、その費用が1人当たり5.000円以下なので飲食費として処理し、交際費としなかった。
交際費から除かれる(損金算入できる)1人当たり5.000円以下の飲食費は、あくまでも得意先など社外の事業関係者への接待のためにかかった飲食代が対象となります。このケースのように、自社の役職員だけを対象にした飲食費は、交際費(あるいは給与)としなければなりません。

■忘年会でのビンゴゲームなどの賞品の費用
原則として福利厚生費となります。ただし、賞品が高額で社会通念上、福利厚生費とは認められないものや賞金を渡す場合は、給与となります。
中小企業の交際費課税の定額控除限度額が600万円に
資本金1億円以下の法人に係る定額控除限度額が、平成21年4月1日以後に終了する事業年度から、400万円から600万円に引き上げられました。したがって、損金算入額は定額控除限度額までの90%とする取扱いにより、360万円から540万円に引き上げられることになります。(平成21年6月19日国会で法案成立)
*すでに申告している場合でも、改正後の措置が適用されます。
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