コラム

「中小企業金融円滑化法の要点と対策」

■源泉所得税漏れがあると会社の負担が増えます

1.正社員以外の給与の源泉徴収で誤りが多い
正社員への毎月の給与支払い事務においては、源泉徴収漏れなどのミスは少ないのですが、アルバイト、契約社員、外国人労働者など、正社員以外の源泉徴収において誤りが多いようです。
源泉徴収税額(源泉所得税)は、「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて計算します。この税額表には給与支払期間に応じて、「月額表」「日額表」「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の3種類があります。月額表や日額表は、給与の支払形態によって甲欄、乙欄、丙欄(日額表のみ)を使用します。この甲・乙・丙欄の適用の誤りによるミスがよくあります。

2.パート・アルバイト・契約社員にも源泉徴収は必要
源泉徴収については、パートやアルバイト、契約社員であっても、税務上は正社員と同様に取扱います。
まずは、アルバイト等から「扶養控除等申告書」が提出されているかを確認してください。提出されていれば、税額表の月額表か日額表の甲欄を使って計算します(提出がなければ乙欄を使用します)。
日雇いや2か月以内の短期アルバイトで、日給や時給で給与を支払っているときは、日額表の丙欄を使います。ただし、期間延長や再雇用によって2か月を超えてしまうと、丙欄は使うことができません。超えた日から、月額表または日額表の甲欄か乙欄になります。以上を整理すると次の図のようになります。

雇用形態 税額表 扶養控除等申告書の提出 使用欄
月給(半月ごと、10日ごとも含む) 月額表 甲欄
乙欄
日給・週給 日額表 甲欄
乙欄
日雇い 日額表 不要 丙欄

3.短期アルバイト等で源泉徴収が不要な場合もある
次のような場合は、源泉徴収をする必要はありません。
①日給が9,300円未満の日雇いや短期(2か月以内)のアルバイト等
②「扶養控除等申告書」を提出していて月給、または日給が一定額*未満のアルバイト等
*扶養親族の数によって異なります。例えば扶養親族が0人であれば、月給88,000円未満(日給だと2,900円未満)になります。

4.外注費が給与とされて源泉徴収漏れになることがある
建設業などでは、一人親方などの個人事業主に工事の一部を依頼し、外注費を支払うことがあります。この外注費を、税務調査で給与とされ、源泉徴収漏れを指摘されることがあります。
外注費か給与かの判定は、それが請負契約か雇用契約かによりますが、実際には判断が難しいところです。請負契約であることを主張するには、次のような書類が最低限必要です。
・請負契約書(業務委託契約書)
・外注先が発行した請求書
・外注代金の領収書


5.源泉徴収漏れした税額が会社負担になることもある
アルバイト等の源泉徴収をしなかったり、していても、「扶養控除等申告書」の提出がないので、本来は乙欄で源泉徴収しなければならないのに、誤って甲欄で徴収していたというような場合は、その本人から不足分を徴収することになります。ただ、すでにその人が辞めてしまっていて、連絡がとれないなど、徴収できない場合には、会社が負担することになってしまいます。

◆源泉所得税の滞納を安易に考えるとあとで大変です!
①余分な税金を払うことになります
徴収した源泉所得税は、原則としてその給与を支払った翌月の10日までに納付しなければなりません。この期限に1日でも遅れると、本来納める税額の他に、ペナルティーとして不納付加算税が課せられます。
●納付していないことに気づき、自主的に納付する・・・税額の5%が加算されます
●納付していないことを税務調査で指摘されて納付するとき・・・税額の10%が加算されます

②融資にも影響します
源泉所得税の滞納があると、銀行のプロパー融資*が難しくなります。また政府系金融機関の融資も受けられなくなります。
*信用保証協会の保証が付かない融資
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