コラム

「公私混同に注意しましょう」

■よくある公私混同の具体例
ある支出が会社にとって必要な支出なのか、私的なものなのかを判断するのは難しい面もあります。しかし、一般的に見て、次のようなことは公私混同とされます。

①趣味のゴルフ費用や遊興費を毎回、交際費などで処理している。
②個人用の高級車を会社名義で購入している。
③休日の家族での食事代まで飲食費にしている。
④会社名義のクレジットカードを自分と家族の私的な支払いに使っている。
⑤家族旅行の費用を出張費にしている。
⑥社長の息子の結婚披露宴の費用を交際費にしている。
⑦社長の奥さんが「このくらい会社で払えないの!」といって、家電製品などの領収書を経理に回している。
⑧一人暮らしをはじめる社長の子供のために、社宅としてマンションを購入(賃貸)している。
⑨役員社宅が豪華すぎるうえ、家賃が低額である。
⑩勤務実態がほとんどない家族に高額の役員報酬を支給している。
⑪必要以上に自分や親族へ会社の資金を貸し付けている。
⑫同族関係者が経営する会社との取引で、条件や価格で特段の優遇をしている。
⑬会社の営業活動に必要のない、売上げや利益にまったく貢献しない、主として社長の趣味的なのものを会社の資産として購入している。
⑭社員を自宅の引越しや家事などの私的な用事に使っている。


■社員のモチベーションの低下や社内不正を誘発する
社長の公私混同を社員はしっかりと見ています。インターネットの質問箱や掲示板には、「社長の公私混同をやめさせたいがどうすればいいか」「税務調査のときに私的費用の付回しを見つけてもらうにはどうすればいいか」といった声なども数多く書き込まれています。
懸命に働く社員が社長の公私混同を目の当たりにすると、どのような気持ちになるのでしょうか。ワンマン社長が多い中小企業では、社長の公私混同があっても、誰も異議を唱えることはできません。すると、社員のモチベーションが低下して、業績にも影響します。
あるいは、モラルが低下し、「社長がやっているのだから、自分も少しは許されるだろう」と社内不正の起こりやすい組織風土となりがちです。

■取引先や金融機関など対外的な信用が低下する
社長が経営計画をしっかり立てて、真剣に経営に取り組んでいるのであれば、取引先、金融機関からの支援もあるでしょう。しかし、会社の資金繰りが苦しく融資や支払延期を依頼したり、税金・保険料などを滞納しているにもかかわらず、不要不急な個人的支出があれば、取引先や金融機関の評価は低くならざるを得ないでしょう。
金融機関は、融資先の信用格付けを行う際、経営者に公私混同があれば評価を下げています。例えば、次のような事項が厳しくチェックされます。
①営業規模に比べ、社長の使う経費が多くないか。
②経営に関係のないような資産等が多くないか。
③社員を私物化して、私的に利用していないか。
④社長が見栄を張るタイプだったり、家族が派手好きでないか。


◆事例:公私混同を理由に融資を断られた
A社長は、景気の低迷から、資金繰りに困り、長年、取引のあるA信金に追加融資を求めたところ、「融資の前に、まず役員社宅や趣味の外国製高級車を処分して、借入金を返済してほしい。その上で新たな融資を考えましょう」と断られてしまいました。

意外なことですが、資金繰りが苦しい企業ほど私的な資金の流用が少なくないという傾向があります。税務上、社長の給与等に認定されないものもありますが、そのような余裕があるのであれば、借入金の返済、内部保留、事業資金等にあてるべきです。
経営環境が厳しいときほど、経営者自らが襟を正して、公私のけじめをつけた行動をとらなければ、本当の全社一丸体制はとれないのではないでしょうか。

「個人的な支出は、税務調査でも厳しく指摘されます!」
最近の税務調査では、赤字法人でも、源泉所得税については厳しくチェックされるようです。例えば、会社経費で購入したテレビ、冷蔵庫などの家電製品や自動車が、社長や家族の個人的なものであれば、調査時に否認され、社長への給与となることがあります。会社経費にしていた個人的な支出が否認されて、給与になると・・・。
●所得税の源泉徴収漏れになる。
●役員(社長)への給与とされた場合、そのほとんどが定期同額給与にならないため、費用(損金)として認められなくなる。
●消費税では、給与(人件費)は不課税となるため、給与とされた支出にかかった消費税分は、仕入れ税額控除ができなくなり、消費税が増える。
●延滞税・加算税が上乗せされる。
公私混同を避け、正しく申告をしたほうが良いのです。
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